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【要約】イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ
知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」



著者
安宅和人


要約
 

外資系戦略コンサルティング企業での経営コンサルタントや、脳神経科学(ニューロサイエンス)の研究者(イエール大学 Ph.D.)を経て、現在はヤフー株式会社執行役員CSOというユニークな経歴を持つ著者安宅和人氏は、その経験の中でビジネス、サイエンスを問わず「圧倒的な生産性をあげる人」に共通する手法に気づいたという。
それは、「イシューからはじめる」というアプローチであり、真に「解くべき」課題=「イシュー度」の高い課題とは何か?意味のあるアウトプットとは何か?を徹底的に考える仕事のやり方といえる。本書ではその手法が詳細に解説され、知的生産性の向上を考えるビジネスパーソンにとって実践的な内容となっている。

全編を通じて、著者がマッキンゼーで学んだ「コンプリート・スタッフ・ワーク」(自分がスタッフとして受けた仕事をいかなる時にも完遂する)という考え方が貫かれており、プロフェッショナルとは何かというスタンス面からも示唆が多い一冊である。

要約

この本の考え方

バリューのある仕事とは何か
「生産性」の定義は、「どれだけのインプット(投下した労力と時間)で、どれだけのアウトプット(成果)を生み出せたか」ということである。だから、生産性を上げたいなら、同じアウトプットを生み出す労力・時間を削るか、同じ労力・時間でより多くのアウトプットを生み出さなければならない。

では、「多くのアウトプット」——言い換えれば、ビジネスパーソンであればきっちりと対価がもらえる「意味のある仕事」とは何か?僕のいたコンサルティング会社では、こうした仕事を「バリューのある仕事」と呼んでいた。

僕の理解では「バリューの本質」は2つの軸から成り立っている。一つめが「イシュー度」であり、二つめが「解の質」だ。「イシュー度」とは「自分の置かれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」、そして「解の質」とは「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い」となる。

本当にバリューのある仕事をして世の中に意味のあるインパクトを与えようとするならこの「イシュー度」こそが大切だ。なぜなら、「イシュー度」の低い仕事はどんなにそれに対する「解の質」が高かろうと、顧客・クライアントなどから見たときの価値はゼロに等しいからだ。

踏み込んではならない「犬の道」

ヨコ軸に「イシュー度」、タテ軸に「解の質」をとり4象限のマトリクスをつくると、仕事をはじめた当初は誰しも左下(イシュー度:低/解の質:低)の領域からスタートする。

「バリューのある仕事」をするために絶対にやってはならないのが、「労働量によって上にいき、左回りで右上に到達しよう」というアプローチである。これを「犬の道」と呼ぶ。

「イシュー度」の低い問題にどれだけたくさん取り組んで必死に解を出しても、最終的なバリューは上がらず、疲弊していくだけだ。世の中で「問題かもしれない」と言われていることを100とすれば、今、この局面で本当に白黒をつけるべき問題はせいぜい2つか3つである。

本当に「バリューのある仕事」の領域に近づこうとするなら、採るべきアプローチは極めて明快だ。まずはヨコ軸の「イシュー度」を上げ、そののちにタテ軸の「解の質」を上げる。つまりは「犬の道」とは反対の右回りで、徹底してビジネス・研究活動の対象を「イシュー度」の高い問題に絞るのである。

圧倒的に生産性の高い人は、例えば1週間でアウトプットを出さねばならないケースなら、「イシューからはじめる」アプローチ(後述)で次のように作業を割り振る。このサイクルを素早く回し、深い論点が出てきたら何回転もさせるのである。

 

【月曜】イシュードリブン:今答えを出すべき問題=「イシュー」を見極める

 

【火曜】仮説ドリブン:(1)イシューを小さく砕き、ストーリーの流れを整理(2)ストーリー検証に必要なアウトプットのイメージを猫き、分析を設計

 

【水曜・木曜】アウトプット・ドリブン:ストーリーの骨格を踏まえ、段取りよく検証

 

【金曜】メッセージドリブン:論拠と構造を磨きつつ、報告書や論文をまとめる

 

イシューからはじめるアプローチ

イシュードリブン——「解く」前に「見極める」
問題はまず「解く」ものと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」ことだ。イシューの見極めについて、「こんな感じのことを決めないとね」といった「テーマの整理」程度で止めてしまう人が多いが、強引にでも具体的な仮説を立てることが肝心である。

そもそも、具体的にスタンスをとって仮説に落とし込まないと、答えを出し得るレベルのイシューにできない。「○○の市場規模は?」というのは単なる「設問」だが、「○○の市場規模は縮小に入りつつあるのでは?」と仮説を立てることで、答えを出し得るイシューとなるのだ。

たとえばある飲料ブランドの長期的低迷の立て直しを検討しているとする。「〈新ブランドにリニューアルすべきか〉」などがよくあるイシューの候補だが、この場合、まず明らかにすべきはブランドの低迷要因である。

仮に市場・セグメントそのものが縮小しているのであれば、通常、ブランドの修正以前に狙うべき市場を見直さなくてはならない。すると「ブランドの方向性の修正」はイシューではなくなる。こういう「なんちゃってイシュー」を最初にはじくことが大切だ。

仮説を立てるための手がかりを得るには、「考えるための材料をざっくりと得る」、つまり、時間をかけ過ぎずに大枠の情報を集め、対象の実態についての肌感覚をもつことが必要となる。情報収集については

 

(1)一次情報に触れる、

 

(2)基本情報(常識や基本的な情報の固まり)をスキャンする、

 

(3)集め過ぎない・知り過ぎない(意図的にざっくりやる)などのコツがある。

仮説ドリブン——ストーリーラインと絵コンテづくり

まずはイシューを分解する
イシューを見極めたあとに「解の質」を高め、生産性を大きく向上させる作業が、「ストーリーライン」づくりとそれに基づく「絵コンテ」づくりだ。この2つをあわせて「イシュー分析(イシューアナリシス)と言う。

これによって最終的に何を伝え、そのためにはどの分析がカギとなるのかという活動の全体像が明確になるのだ。検討プロジェクトがはじまったら、できるだけ早い段階でこれらの一次バージョンをつくろう。

例えば3,4ヶ月のプロジェクトであれば、最初の週の最後、遅くとも2週目のはじめには、「1週間目の答え(ワン・ウィーク・アンサーとと呼ばれる第1次ストーリーラインをつくるというのが理想である。

多くの場合、イシューは大きな問いなので、いきなり答えを出すことは難しい。そのため、おおもとのイシューを「答えを出せるサイズ」である「サブイシュー」にまで分解する。この際「ダブリもモレもなく」、そして「本質的に意味のある固まりで」砕くことが大切だ。

典型的な問題の場合にはイシューを分解する「型」を使うこともできる。たとえば事業単位の戦略立案時に使う「Where(どの領域を狙うか)・What(どのような勝ちパターンを築くか)・How(どのように実現するか)」と呼ばれる型だ。

なおフレームワークは、イシュー見極めでは網羅的な情報収集に役立ち、「イシューを砕く型」としても使うことができるが、危険なのは、目の前のイシューを無理やりそのフレームにはめ込んで本質を見失うことだ。どんなに有名なフレームワークでも万能ではないことは、いつも頭のどこかに置いておきたい。

ストーリーラインを組み立て、「絵コンテ」にする
また分解したイシューに基づいてストーリーラインを組み立てるには、次の2つの型があり、どちらかの型をストーリーの背骨とすることで、ストーリーラインは比較的簡単にできるだろう。

 

1.「Whyの並び立て」
理由ややり方を「並列的に立てる」ことでメッセージをサポートする。例えば「案件Aに投資すべきだ」と言いたい場合、「なぜ、案件Aに魅力があるか」「なぜ、案件Aを手がけるべきか」「なぜ、案件Aを手がけることができるか」の3つの視点から「Why」を並べ立てる。

 

2.「空・雨・傘」
次のような3段階のストーリーを組んで、最終的に言いたいこと(ふつうは「傘」の結論)を支える。多くは、「雨」の部分の課題の深掘りがどこまでできるかが勝負どころとなる。

「空」……(課題の確認)→「西の空がよく晴れている」
「雨」……(課題の深掘り)→「当面雨は降ることはなさそうだ」
「傘」……(結論)→「今日傘をもっていく必要はない」
イシューを分解して並べたストーリーラインに沿って、分析イメージ(個々のグラフや図表)を必要なだけつくる作業が「絵コンテ」づくりだ。言葉だけのストーリーラインに、具体的なデータをビジュアルとして組み合せることで、急速に最終的なアウトプットの青写真が見えてくる。

絵コンテづくりでも「イシューからはじめる」思想で、「これなら取れそうだ」ではなく、「どんなデータがあれば、個々の仮説=サブイシューを検証できるのか」という視点で大胆にデザインする。

アウトプットドリブン——実際の分析を進める
絵コンテを本物の分析にしていく際に大切なのは、「いきなり分析や検証の活動をはじめない」ことだ。サブイシューのなかには、必ず最終的な結論や話の骨格に大きな影響力をもつ部分がある。

まずそこから手をつけ、本当にそれが検証できるのかについての答えを出してしまう。具体的には、カギとなる「前提」と「洞察」の部分になるだろう。それからバリューが同程度であれば早く終わるものから手をつける。これがアウトプット段階での正しい注力だ。

メッセージドリブン——「伝えるもの」をまとめる

イシュー、それを基にしたストーリーラインに沿って分析・検証が済んだら、あとはイシューに沿ったメッセージを人に力強く伝わるかたちでまとめよう。これが「メッセージドリブン」である。

聞き終わったとき、あるいは読み終わったときに、受け手が語り手と同じように問題意識をもち、納得し、興奮してもらうために、「本質的」「シンプル」という2つの視点で磨き込みを行う。論理構造や流れ、結論を端的に説明できるか、という点でストーリーラインの構造を磨き、その上でチャートを精査するのである。

 

 

 

 

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